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事例22
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仙台地方裁判所判決/平成23年(ワ)第1793 号
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平成25年1月25日
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請求額3445万1999円/うち3326万7000円を認容。
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デイサービスの利用者が離設、玄関前スロープで転倒・骨折した事案
利用者が特定疾病であるため大変若く、そのために将来介護費用が膨れ上がり驚異的な賠償額が下された、近時まれにみるバランスの悪い判決といえるでしょう。
施設は地元のNPO法人が運営する小規模なものだった様ですが、余りに過重な見守り義務を押し付けるものであると考えます。
(1)利用者の状態
女性 59歳 要介護度2「起き上がり」は「何かにつかまればできる」 「座位保持」は「できる」「両足での立位保持」 は 「支えなしでできる」
「歩行」は「つかまらないでできる」、「_-移乗」は 「自立」、「移動」は「自立」、「立ち上がり」は、「何かにつかまればできる」、「 肩足での立位保持」 は「支えなしでできる」認知症及びてんかん発作症状
被告代表者は、 平成20年8月、 Aを担当していたケアマネージャーから、 Aの娘が原告をマンツーマンで介護していたにもかかわらず、 ちょっと 目を離してしまった隙に、 原告が一人で玄関に行って転倒し、右肩骨折したことを聞いており、
同年10月に本件介護サービス契約を締結する際、 「看護計画表」における「 課題」欄に「転倒予防やてんかん発作症状のために見守りが常時必要で、 日常生活行動も介助が必要である。」などと記載し、 その 「目標」欄には、 「安全にデイサービスでも日常生活を過ごす」 などと記載し、
その 「計画」欄には、 「家族とも情報交換をノートなどでとり、 その日ごとに注意点をスタッフ全員で共有する。」「みんなの輪の中に誘導し、 人の目の届く中にいられるようにする。」 「ひとりで動くときには、 スタッフがひとりつく。」「トイレは一緒に入り、 介助をする。」などと記載した。
(2)事故態様
本件事故日、 被告施設には、 介護スタッフが5 名、 施設利用者が8 名いた。
本件事故直前、 被告代表者は、 Aといすに座って写真集を見ながら会話を交わすなどしていたが、 別の施設利用者の移乗介助を行うため隣室に移動し、その際、 原告に背中を向ける形になって3分間ほど原告から目を離した。
その間Aの隣室にいたスタッフが、 玄関の方に向かつて歩いているAの姿に気が付き、 被告代表者に対して「Aさんが玄関」と声を上げたため、 被告代表者は急いで玄関に駆け寄ろうとしたが、Aは施錠されていないドアを横に開けて前のめりに倒れて本件事故が発生した。
(3)事故後の経緯
Aは、 本件事故により右大腿骨転子部骨折の傷害を負い、 事故の翌日である平成20年10月17日から同年12月2日までの47日間、 東北大学病院に入院した。
早期離床を目的に平成20年10月23日に全身麻酔をして手術を施行し、 平成21年5月27日のレントゲン上、 骨癒合が得られているが、 若年性認知症及び症候性てんかんといった合併症もあることから、 積極的なリハビリテーションは行えず、 自立歩行は困難であると診断され、要介護度は5になった。
(4)判決文ハイライト
「被告は、 Aが転倒予防やてんかん発作症状のために常時見守りが必要な状態であり、 一人で動くときには1 対1 で対応しなければならならないという前提でAの介護を引き受け、
またAが認知症の症状のために介助者の指示に従わずに一人で動き出してしまうということがあるということを本件事故時までに認識していたにもかかわらず、 別の施設利用者の介助という専ら被告側の事情によって、 Aを被告スタッフのいずれからも目が届かない状態に置いて本件事故を発生させたものである。
被告代表者がA代理人に対し、「今、 こういった事故の後に、 思えば、今後は誰かに声をかけるということで、 Aさんを見ておいてくださいということは言っていくということなのか、 というふうには思います。」などと認めているように、本件事故は不可抗力によって発生したものであるとは認められない。
被告代表者は、 隣室で他の施設利用者の移乗介助をしている間、 Aに危険があるのではないかと考えなかったかと被告代理人に問われた際、 原告が徘徊歩き回る状況であれば、 目を離さなかった、
あるいは、 他の方法をとったと思うが、 Aが本件事故当日の午前中はずっと歩き回り、 その後に昼食をとった後、 写真集を見ながら座っていたので落ち着いていると判断した、 被告代表者やAがいた部屋とは別の部屋には他のスタッフがいて、 Aがそのスタッフがいる部屋に移動した場合には、 他のスタッフが対応可能であった旨を述べ、
また、 写真集を見て一つのことに集中していたAをスタッフがいる別室に連れて行くということは適切ではないと考えた旨も述べるが、 これらの点は、要するに、 被告代表者が判断を誤ったというのにすぎないのであって、
その他に被告が主張する点を考慮しても、 本件事故発生に対する被告の過失は免れず、 本件事故に対する被告の不法行為責任は肯定される。」
(5)認定損害額の主な内訳
治療費265万円 看護施設費用26万円 入院雑費52万円 入通院慰謝料325万円 後遺症慰謝料550万円 将来介護費2098万円
弁護士費用300万円
(6)外岡コメント
判決文を読めば一目瞭然ですが、通常であれば「職業上の自責の念」、つまり道義的責任を認めるレベルでの謝罪と目される施設長の言葉がそのまま過失を認める要因とされている等、相当利用者側に偏った認定であるといえるでしょう。
現場の状況からすればもっともといえる当時の対応についても「要するに、 被告代表者が判断を誤ったというのにすぎない」と断じており、余りに杜撰な認定です。最終的には控訴審において和解となった様ですが、事例4同様多いに疑問の残る先例となってしまいました。