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Q:8 知的障害の者が相続人となる場合の相続手続について
主人が昨日他界したのですが、預貯金などすべて本人管理だったので、何もわからない状況です。
キャッシュカードの暗証番号などもわからず年金も下ろせません。生前、定期が一千万くらいはあると聞いた記憶はありますが、詳細は不明です。
どのような手続きが今後必要なのかご教示いただけると助かります。
これは、実は非常に悩ましい問題です。「正論」を言いますと、末っ子の方には後見人を付け、その後見人と協議した上で遺産分割手続きを行わなければなりません。
ですが、既にご承知かと思いますが、後見人というものは一度就任してしまうと、相続が終わって用済みになったからといって自由に外すことができないのです。つまり未来永劫後見人が付いて回ることになります。専門職が後見人になる場合、毎月2、3万円の報酬を払わなければなりません。
「それは面倒だし、預金を引き出せさえすれば良いので、何とか大ごとにせずやり過ごしたい」という場合は、お薦めはできませんが末っ子の判断能力次第では「意思能力あり」と見做し遺産分割協議を実行してしまうことが考えられます(最低限医師の診断書等を取得する必要はあるでしょう)。
本来は本人の利益保護の観点から望ましい方法とは言えないのですが、しかし筋を通す方法が他に成年後見を正式に付けるしかないというのであれば、明らかに制度自体の欠陥であり、融通が利かなさすぎると言わざるを得ません。
お考えの様に均等・平等に分割するというのであれば、殊更に末っ子の方にとって不利益となるものでもないため、許されると解すべきではないかと考えます。
実際にやることは遺産分割協議書を作成し、そこに三者が署名押印したものを銀行等に提出しお金を引き出すだけですので(不動産の場合は手続きが厳格でありやや面倒になりますが)、別に裁判所の審査を受ける訳でもないため、やろうと思えばできてしまうというのが現実です。この点も現行の法制度は明らかに不備といえるでしょう。
要は表沙汰にしなければ幾らでも内輪で進めることができてしまうのですから、逆に自身の権利を主張できない人が人知れず不利益を被る状態を放置しているといえるのです。
因みに、本件は後見人がいないケースでしたが、もしご兄弟の誰かが末っ子の方の後見人だった場合は、後見人の立場で遺産分割に臨むと利益相反の状態となってしまうため、家裁に申し立て特別代理人を立てる必要があります。