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Q:7 事故後の示談交渉の方法
老健の相談員です。1年以上前、現場職員がご利用者を車椅子からベッドに移乗する際、抵抗されたにも拘わらず無理に移そうとしてしまいそのはずみで左大腿骨を骨折させてしまいました。
事故から1週間後、ご家族に対し謝罪に伺った際、「入院費はこちらで負担しますので」と言いました。通常、高齢者の骨折の場合2、3か月もあれば退院されることが多いため、その時は当方の落ち度が明らかであったこともあり特に考えず約束してしまいました。
ところが、そのご利用者はそれから1年以上入院を続けられたのです。その主な原因は、入院後1か月でIVH(経管栄養)対応となってしまい、元の老健等の施設に戻ろうにもできなくなってしまったことが挙げられます。しかし今の病院はいわゆる療養型病床でもなく、普通の病院であるため、なぜここまで長引いてしまったのか不思議です。
損害賠償保険からは無審査で150万円が出ることとなったため、ご家族に対してはこの額を慰謝料としてお支払いしたいと思いますが、この先いつまで入院が長引くか不安です。このような場合ご家族にどう説明し交渉していけばよいでしょうか。
交通事故等の通常の損害であれば、入院中いわゆる「症状固定」の状態になればそこで入院費・治療費は打ち止めとなり、後は後遺障害として対応を検討するというのがセオリーです。しかし高齢者の場合は、いつまで経っても骨が付かない場合もあるため、医師の意見を元に症状固定を擬制することもしばしばあります(通常は入院3か月が目安となるようです)。
本件では、最初の対応で「入院費を未来永劫持つ」との趣旨で約束をしてしまったことが悔やまれるところです。このままでは賠償額が膨らむ一方なので、ご家族に「基本的には損害賠償保険で対応させて頂くものであり、入院費の方は法人の誠意としてお支払いしてきたが、どこかで区切りを付けさせて頂く必要がある」旨切り出し、何とかして理解を求めることが必要でしょう。
そのような対応は、ご家族側から見れば「手の平を反す」ことに他ならないため、非難轟轟となることは必至でしょう。ですがそれでも、無理をして払い続けた挙句突然ギブアップするよりはましです。
「まず病院のMSWや医師の見解を聴き、現状を確認させて頂きたい。その上で転院等見込まれる様であれば、補償は今の病院を出るまでの間とさせて頂きたい」等とはっきり意向を伝え、理解が得られない様であれば平行線でありやむを得ないとして、後は裁判所での調停等の法的手続に移行する他無いものと考えます。何にせよ無理は禁物です。