本サイトのコンテンツは、全て月会費以内で制限無く閲覧頂けます
Q:6 軽微な違反を理由に介護報酬返還を求められ納得いかない
訪問介護とケアマネ事業所を運営する会社の社長です。先日実地指導があり、その結果として「改善を要する事項が認められましたので、速やかに改善を図るとともに報告してください」という書面が送付されました。そこにはこう書いてありました。
「居宅サービス計画の変更に当たり、サービス担当者会議の開催に代えて担当者に対する照会等により意見を求めた場合に、一部の担当者に照会を行っていないときの居宅介護支援費について、所定の運営基準減算割合による単位数で算定していない事例が認められた。
ついては、運営基準を満たさない期間に係る介護報酬請求額を精査の上、その結果を報告するとともに保険者に申告し、その指示に従って返還手続きを行うこと。」「居宅介護支援費に係る運営基準減算の適用対象期間に、特定事業所加算Ⅱを算定している事例が認められた。ついては、算定要件に適合していない期間に係る介護報酬請求額について自主点検を行い、その結果を報告するとともに保険者に報告し、その指示に従って返還手続きを行うこと。」
これは要するに、うちのケアマネージャーがあるご利用者のサービス利用前日に担当者会議を予定していたのですが急きょ入院することとなり開催できず、かわりに別のケアマネが各事業所に照会を行いプランを作成し、本人に了解を得たのですが、そのときある事業所への照会が一件漏れていたのでした。そのままサービスを提供し続けてしまい、実地指導時には「少なくとも半年分返還になる」と言われました。
報告期限は30日とありますが、私は今回の処分にどうしても納得がいきません。ケアマネ自身が突発的に入院したという特別な事情があり、一方でご利用者には何ら不利益が生じていないためです。それにも拘らず300万円の返還をしなければならないというのは、余りに不当ではないでしょうか。
仰る通りであり、法の大原則である「比例原則」(目的達成のための手段は必要最低限であること)、「平等原則」(行政機関は合理的な理由なく国民を不平等に 扱ってはいけない)に違反している可能性があるといえ、不当と思われるのであれば争う方法はあります。
まず考え方として、行政の行為には「指導」と「処分」の二段階があるところ、本件はどちらなのかをはっきりさせる必要があります。処分ということであれば、「処分取消の訴え」(抗告訴訟)という行政訴訟を提起します。指導に過ぎないということであれば、当事者訴訟という形で同じく行政訴訟が可能です。 処分性が認められるか否かは、➀その行為に法的根拠があるか、および➁処分権者が明示されているかの二点となります。
本件では、該当するとすれば介護保険法22条1項「偽りその他不正の行為によって保険給付を受けた者があるときは、市町村は、その者からその給付の価額の全部又は一部を徴収することができる。」でしょうから、➁は当該市区町村の長ということになります。
もし指導書面に明記されていなければ、まずはその点を確認するため、今回の行為の法的根拠を明示する様、こちらから期限を区切って市長宛てに内容証明で質問状を送ると良いでしょう。
行政指導は、処分のように、相手方に義務を課したり権利を制限したりするような法律上の拘束力はなく、相手方の自主的な協力を前提としています。したがって、行政指導を受けた者に、その行政指導に必ず従わなければならない義務が生じるものではありません。
もし「指導」に過ぎず、法的根拠もないということであれば、お考えの事情を主張し応じないという対応も十分可能です。もっとも相手は保険者でありあまり事を荒立てたくないということであれば、1か月分の返済に収めるといった妥協点を見出すことも良策といえるでしょう。いずれにせよ行政に言われたからといって何でも無条件に従う必要は全く無いのです。