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    Q:5 マイナンバー・要介護度認定申請等の代行事務に関し介護事業所が個人番号関係事務実施者に該当しない論拠について

Q4で出た論点につき、いかなる法的構成により標記結論が導かれるものかご教示頂きたい。

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厚労省に10月4日付で送信した照会書を貼付します。

 ↓

老発0929第5号(平成27年9月29日)に関するご質問(その2)

 お世話になっております、外岡です。先日ご質問させて頂きました標記の件につきまして、小職の方で検討しました結果、下記見解に至りました。以下につき誤りが無いかをご教示頂ければ幸いです。

命題:介護保険施設、居宅介護支援事業者をはじめとする民間の介護事業所はいずれも利用者との関係において個人番号関係事務実施者には該当しない。

論拠:

1.番号法

2条13項
「この法律において「個人番号関係事務実施者」とは、個人番号関係事務を処理する者及び個人番号関係事務の全部又は一部の委託を受けた者をいう。」


同条11項
「この法律において「個人番号関係事務」とは、第九条第三項の規定により個人番号利用事務に関して行われる他人の個人番号を必要な限度で利用して行う事務をいう。」

2.介護保険法

27条
「要介護認定を受けようとする被保険者は、厚生労働省令で定めるところにより、申請書に被保険者証を添付して市町村に申請をしなければならない。この場合において、当該被保険者は、厚生労働省令で定めるところにより、第四十六条第一項に規定する指定居宅介護支援事業者、地域密着型介護老人福祉施設若しくは介護保険施設であって厚生労働省令で定めるもの又は第百十五条の四十六第一項に規定する地域包括支援センターに、当該申請に関する手続を代わって行わせることができる。」

3.考察

個人番号関係事務実施者とは、上記のとおり「個人番号利用事務に関して行われる他人の個人番号を必要な限度で利用して行う事務を処理する者」と定義されるところ、右事務は飽くまで同人が「義務として」処理する場合に限られ、源泉徴収票の作成を始めとするいわゆる雇用関係における各種税務・社会保障関連手続が代表的な例として挙げられる。


一方、今回本通知により個人番号の付記が義務付けられる書式は、要介護度の認定・更新・区分変更等(以下「要介護申請関連業務」という)、いずれも本来的に「被保険者が」その主体となり作成・申請を行う性質のものであり、実務上これに関わることとなるケアマネージャーや特養等の施設は飽くまで「委任を受けて」これを代理人ないし使者として行うに過ぎない(介護保険法27条1項参照)。


この点実務においては、在宅では担当ケアマネージャーが、施設では当該施設が特に委任状等も取得しないまま要介護申請関連業務を代行しているという現実がある。もし、かかる事業所が「個人番号関係事務実施者」に該当するのであれば、同事業所は担当する利用者(被保険者)に対しその個人番号を聞き出すことが番号法上可能となり(同法14条1項)、個人番号の収集・付記の促進に資すると思われる。


しかし一方で、被保険者は社会保険労務士ないし弁護士に対しても要介護申請関連業務を委任することが法律上可能である(社労士法2条1項参照)ところ、介護保険事業所が一律に関係事務実施者として個人番号を収集することを是認することは、かかる方途(社労士に依頼するという選択肢)を否定することとなり妥当では無い。


要するに「個人番号関係事務」とは、当該事務が実施者にとっても「義務」とされる場合に限られる性質のものであるところ、要介護申請関連業務は飽くまで被保険者がケアマネージャー等に「代わって行わせることができる」ものに過ぎず、事業所の立場からすれば義務では無いのである。


この点「指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準」第8条1項等は「指定居宅介護支援事業者は、被保険者の要介護認定に係る申請について、利用申込者の意思を踏まえ、必要な協力を行わなければならない。」と定め、介護保険施設等についてもこれに類する規定が存在するが、「必要な協力」との表現に止まる (運営基準の解釈通知には「…被保険者から要介護認定の申請の代行を依頼された場合等においては、居宅介護支援事業者は必要な協力を行わなければならないものとしたものである。」(3「運営に関する基準」(3)要介護認定の申請に係る援助)とある。)以上「個人番号関係事務」該当性の論拠と解することはできないものと思料する。

結論:
 介護保険事業所は個人番号関係事務実施者には該当しないため、施設であれば入居者の、在宅ケアマネージャーであれば担当利用者の個人番号を収集することはできない。
 事業所が利用者の個人番号を要介護申請関連業務に必要な書式に記載するには、個別に同業務の代行を委任する旨の意思表示を取得することが必要となる。

課題:
 事業所が要介護申請関連業務の代行を委任する旨の意思表示を受けた上で利用者の個人番号を申請書に記載できるとして、当該個人番号の控えを取る等して保管し、次期更新等に流用することが許されるか(一般法理論に依拠する「代理(委任)」の構成で番号法を扱う事務を他者に委任することは番号法15条、20条に拘わらず可能とする前提を採った上で、当該委任は単発の事務毎になされる必要があるか、ある程度概括的・継続的な委任も許容されるかが問題となる。) 。


 要介護申請関連業務を委任する意思表示につき、行政窓口において書面で確認する必要があるか。明らかに後見相当と認められる認知症利用者については、後見人を付さない以上、委任意思確認の方法が存在しないことになるが、その様な場合は個人番号の付記を例外的に要しないという扱いになるのか。


(以上考察)

 本件の関係事務者該当性の問題は、要するに、在宅のケアマネージャー等介護保険事業所に対し、従業員を雇用するいわゆる法人と同じ機能と責任を負わせるか否かという問題といえます。


もしケアマネージャー等が各人の担当利用者との関係で個別に関係事務者に該当するとなると、通知カード交付開始後直ちに個人番号を収集する活動を開始しなければ、認知症高齢者の下に送られたカードは散逸・紛失し制度普及に著しい支障を来すことになるでしょう。

 

しかしケアマネージャーの立場からすれば自らが(或いは事業所・法人単位で関連事務者と見做される可能性もゼロではありませんが)関係事務実施者に該当するとされると途端に一法人と同レベルの管理・保管義務を課されることとなり、厳格な番号法の規制を各人に遵守させつつ来年1月以降の書式に反映させることは事実上不可能であるとも思われます。
 
 かかる実務上の懸念も考慮した上で、小職としては今回の結論に至ったものですが、今月7日にはケアマネージャー連絡会にてマイナンバーに関する講演を依頼されており、その他本通知に関する様々な疑問(「ケアマネージャーとして、担当利用者から個人番号を聞き出す必要があるのか」等)が寄せられておりますところ、もし御庁の見解を頂ければこれを前提として早い段階で今後の指針を示すようにしたいと考えております。

以上

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