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Q:34 職員が隠れて利用者から金品を受領していた
住宅型有料と、そこと併設してデイサービスを運営しております。先日、デイの職員から「ある元ご利用者が一日に何通もメールを送ってきたり、自宅の前をうろうろしていて怖い。」という相談がありましたので、警察に相談に行かせました。
すると、その職員は以前から当該ご利用者からたびたび金品を受領していたことが分かりました。
職員に再度尋ねたところ、「最初は花やお菓子等を施設に持参し、都度お礼を述べて職員皆で共有していたのですが、徐々にエスカレートしていき、数万円の腕時計やパソコン等も個人的にもらっていた、断りきれなかった。」とのことでした。
総額は実に100万円にのぼるのですが、そのご利用者は職員が思い通りに対応しないことに憤り、携帯メールで「渡したものを全て返せ。さもなければ施設の玄関のガラスを破壊します。」等と脅迫文を送ってきたといいます。
法人としてもこうなった以上看過できないと思いますが、法人の方から相手の元利用者に何か警告などを発すべきでしょうか。その職員は大変反省しており、以後私的に金品は受け取らないと誓約してはおりますが、今回は言われたとおり受領したものを返還しなければならないでしょうか。
大まかな方針としては、法人は本件に出来る限り関わるべきではありません。このような事態に陥ったのも、断れなかった理由があるとはいえ全てその職員の責任なので、法人が間に入り交渉等すべきではないものと考えます。
ただ、施設のガラスを破壊する等と危害を加えるメールを職員に送っているので、形式上はそれ自体が威力業務妨害罪に該当し、また犯罪の予告として警察に取り締まってもらう事も考えられます。しかし相手は高齢者であり、現実の危険性に乏しいとして警察はなかなか介入してくれないことが予想され、また感情的になり一時的にそのようなメールを送っただけである可能性も十分あるものと思われます。
そもそも、自分の意思で無料で他人にあげたもの(贈与といいます)を、本件のように後から返せといえるかについては、民法550条で「書面によらない贈与は、各当事者が撤回することができる。ただし、履行の終わった部分については、この限りでない。」と定められています。
本件ではモノ(不動産と対比して「動産」といいます)になりますので、受け取った時点で「履行の終わった」とみなされ、返還義務は無くなります。
従って法律上はその元利用者に返還する必要も無いということになるのですが、高額でもありますので、当該職員は代理人を自分で立て交渉をするのが妥当かと思います。
「現実に返すことができる部分については返還する、その代わりつきまとい行為等をしない」という約束を交わせると良いでしょう。
合わせて、今後の予防策としては、どんなものでもご利用者ご家族から施設に対してということで頂いたものは本部に逐一報告する様周知徹底し、プライベートで金品を受領することは厳禁とする旨告知する必要があるでしょう。