本サイトのコンテンツは、全て月会費以内で制限無く閲覧頂けます
Q:27 サ高住のご入居者の外出時のリスクについて
サービス付高齢者向け住宅を経営している者です。うちの建物では、現在30名ほどにご入居頂いていますが、平均要介護度は1.7です。
まだ元気なご入居者が多く、外出も自由にして頂いているのですが、最近90歳の男性ご入居者が外出先で心不全で倒れ救急搬送されるという事件が起きました。
倒れた場所がちょうど電車の踏切のすぐそばだったため、その方のご家族は「名古屋のJR鉄道事故事件のようなことが起きては困る」と心配され、私たち事業所に対し「父を外出させないでください。」と言ってこられました。
当のご本人は平気な様で、「一人で外出したい。構わないでくれ」等と言われ、ご家族との板挟みになってしまっています。しかし元々サ高住は「施設」ではなく飽くまで「住居」という建前であり、ご入居者様に自律的生活を営んで頂くというコンセプトのものです。
ですから、私たち事業所側がお一人お一人の生活に干渉するのもおかしいと思うのですが、そもそも本件の様に外出時に事故が起きた様な場合、我々事業所側が責任を負う様なことがあるのでしょうか?
仰る通り、サ高住は施設ではありませんし、付随するサービスも24時間文字通り絶え間なく見守ることを想定しているものではなく、言ってみれば通常のマンション管理人の仕事が多少手厚くなった様なものです。まずはそういった施設との違いを、入居される方やそのご家族に十分説明し理解を得ることが重要ですね。
本件の外出の問題については、飽くまでケースバイケースで判断されますが、可能性として責任を問われることがあるか無いかと問われれば、残念ながら「ある」と言わざるを得ません。実はサ高住の入居者が外出し事故を起こし、裁判になったケースは私の知る限りでは現時点で未出であり、個々の入居者に対し事業所として外部に損害を及ぼさないための監督義務を負うのか、負うとしてどの程度なのかは全く未知の論点であるといえます。
ここから先は推測になりますが、施設等が第三者に対し不法行為責任を負うか否かは、基本的に「予見可能性」の有無と程度により判断されます。
本件でも、そのご入居者が外出先で頻繁に事件を起こしたり倒れることを繰り返していたのであれば、いつか踏切等で倒れ大事故につながることが予見できたといえ、サ高住とはいえ関連する訪問介護やケアマネ等が責任を問われる可能性はそれだけ高まるといえるでしょう。
そうなると、ケアマネは他所の事業所だったりと、その入居者を支える介護体制も千差万別ですから、一律に論ずることは益々難しくなります。まずは現実的なリスク回避策として、ご家族と一緒にご本人を説得し、訪問介護を付けて付き添いの下外出するといった妥協策を講じてみてはいかがでしょうか。