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Q:15 公正証書遺言を作る際の注意点
Q2に関連して質問です。私の父は軽度認知症なのですが、兄弟には財産を渡したくないので、今の内に遺言を作ってもらおうと考えました。公証人のお墨付きがあれば文句も出ないだろうと考えておりました。
ところが「公証遺言であれば絶対に有効」とは限らず、本人が認知症であれば作成能力が認められず無効となるとのことでした。
父はまだ大抵のことは自分で判断でき、遺言の内容も「全部自分にやる」というシンプルなものなのですが、それでも認知症と診断された以上、もう手遅れなのでしょうか?
必ずしも手遅れとは限りません。遺言が有効と認められるには複数のポイントがあり、有効性が争われるとそういった点が総合考慮の上判断されます。重要なことは、「公証遺言であれば絶対有効とは限らない」ということです。
そもそも遺言が認められるには「遺言能力」が作成当時あったと認定されることが必要ですが、遺言能力とは「遺言事項を具体的に決定し、その法律効果を弁識するのに必要な判断能力たる意思能力」と定義されます。
そして、その有無は主に次のポイントから判断されます。
「➀遺言時における遺言者の精神上の障害の存否・内容・程度、➁遺言内容それ自体の複雑性、➂遺言の動機・理由、遺言者と相続人との人間関係・交際状況、遺言に至る経緯
実際に、元々「妻に全財産を相続させる」という遺言をしていながら、30年近く後になって妻の存命中に「自分の妹に全財産を相続させる」という内容の公正証書遺言を作成したというケースで、妻側が後者の遺言の無効を裁判で主張したところ、最終的に無効と認められたという裁判例があります(東京高判平成25年3月6日判時2193号)が、これなどは詳細に遺言作成に至る経緯を検証しており、一審で有効とされたものが覆りました。
ですから、ご自身にとってあまりにあからさまな利益誘導になっていないか、それが自然といえるかという第三者的観点から見て頂き、問題ないと判断されれば作成に踏み切っても宜しいかと思います。