本サイトのコンテンツは、全て月会費以内で制限無く閲覧頂けます
Q:2 認知症の親が公正証書遺言を作成したが
父の死後、公正証書遺言が出てきました。しかし、その作成日付の当時、父は既に重度の認知症であり、遺言に書いてある様な内容を理解することはできなかったはずです。
このような遺言も有効となるのですか。
裁判所に無効と判断される可能性が高いといえます。
公正証書遺言(「公証遺言」と略します)とは、公証役場で公証人に作成を代行してもらい、その役場で本人が亡くなるまで遺言正本を預かってもらうという方式の遺言をいいますが、そのような第三者を介する正式なやり方であったとしても、「公証遺言であれば絶対に有効」とは限らないのです。
遺言をする「意思能力」が欠けているとして、裁判でその無効が確認されたケースも過去に幾つかあります(東京高裁判決昭和52年10月13日、東京高裁判決昭和57年5月31日判決、平成24年3月29日高知地裁判決等)。
本件で、当時お父様が認知症で遺言を作ることもできなかったということを立証するには、主に当時の介護に関する記録(認知症であったことを推測させる事実に関する記録)や、当時の医師の診断書、認知症対策の薬を服薬していた事実等が直接の証拠となるでしょう。
そうした資料を介護事業所等に開示してもらう等してできる限り集め、遺言を作成させた親族が他にいるのであれば(当該遺言により得をする相続人であることが多い)その人に証拠を示し説得します。
それでも引き下がらない場合には、先に挙げた様な「遺言無効確認請求訴訟」を、管轄の地方裁判所に提起して裁判所に無効を確認してもらうしか方法はありません。
一度裁判になると泥沼になること必至ですが、相手も遺言内容の実現を懸けて必死で反論してくるでしょうからやむを得ないところです。
その様なトラブルにならない様、遺産を残す親御さんご自身の元気な内に先手を打って親族間協議をしておくことが大切ですね。