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Q:2 任意後見契約を結んだ兄から母の財産を取り戻すには
都内在住、50代の女性です。私の母は80歳、都外の実家で兄(60代)と同居しています。介護保険は申請しておらず、まだ認知症と診断されてもいないのですが、最近は年相応に物忘れがひどくなっている様です。
以前から月に一度は様子を見に帰っているのですが、どうも最近母の通帳から不審な引き出しが多く、管理している兄に問い質したのですが曖昧なことを言いはぐらかすだけでした。
そこで私が「身内のこととはいえ、却って身内だからこそお金の管理はきちんとした方がいい。お母さんのためにも後見人を申し立てます。」と告げたところ、兄は「母さんは俺に後見人になってほしいと言うから、もう後見契約を結んでしまったよ。」というのです。
調べたところ兄のいう後見とは任意後見契約のことであり、予め後見人を指定できる制度であると分かったのですが、これを覆すことはできないでしょうか。
家庭裁判所に法定後見を申し立てれば、裁判所の判断により第三者が後見人に選ばれ、任意後見に優先する可能性はあります。
まず前提理解として、いわゆる後見制度には「法定後見」と「任意後見」の二種類があり、この二つが競合するということもあり得ます。今回は先にお兄さんが任意後見を締結してしまっているので、こちらとしてはいわば対抗策として法定後見のレールに切り替えようと働きかける訳です。
任意後見契約に関する法律」第4条第1項第3号ハには、任意後見受任者が「不正な行為、著しい不行跡その他任意後見人の任務に適しない事由がある者」である場合には、後見人となることができないと定めています。お兄さんが、例えばお母様の預貯金を私的流用していた等の事実があれば、これに該当するとして任意後見の発動を阻止することができるでしょう。
そのためには証拠が必要となるところ、通帳履歴やレシート等をできるだけ事前に集めることができれば望ましいといえます。もっとも、何も裏付けとなるものが無くとも取り敢えず申立てをすることで、手続の中で相手方(お兄さん)に対し記録の開示を促すことはできますので、それほど厳格に準備する必要はありません。